2011年6月6日月曜日
6月3日 パート2 @ミュンヘン、ドイツ
『BISS』 誌の三本柱の2つ目は、死の扱い方だ。実は、このストリート・マガジンは、これまで7人の販売者の死をみとってきた。そして、彼らのための墓も購入している。
ヒルデガルドにその場に連れて行ってもらう。緑豊かな林の中に、そのお墓があった。きれいに花が植えられ、死後もいろんな人が彼らを気にかけているのがよくわかる。
この制度が始まったのには、ある1人の男性が深くかかわっている。
『BISS』誌が初めて販売者の死に直面した時、ヒルデガルドたちは今後この問題にどう直面したらいいのか、考え、読者に問うた。
その文面に心動かされたのが、ルドルフ・モシャマーだ。彼はファッション・デザイナーとして成功していたが、実は父がホームレス状態を経験していた。そんな経緯もあって、ルドルフは、もし自分が死んだら50万ユーロとその利子を『BISS』誌に寄付すると表明したのだ。
こうして『BISS』誌は、路上から墓場まで、販売者とかかわる道を選んだ。
彼らの墓のある木立の中で、ヒルデガルドは語る。「ある販売者が深刻な病気になった時、今後のことを話し合ったわ。でも、彼は、どうしても死のことを考えられなくて、『どうして今そんな話をするんだ』って怒ったの。私たち、怒鳴りあう喧嘩も何回かしたわね。でもね、最後の最後に彼、『僕は『BISS』のお墓に入るよ。ヒルデガルド、これまでありがとう』って言ってくれたのよ」
そう言って、ヒルデガルドは泣いていた。ヒルデガルドの目に涙・・・どうすることもできなくて、ただ背中をさする。「ごめんなさい、彼とのことを思い出すと、いつも泣けてきてしまう。彼は本当に私のベストフレンドだったのよ」、そう言って顔を上げたときには、ヒルデガルドの目にはもう涙はなかった。
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