2011年6月13日月曜日
6月9日 パート2 @ポズナン、ポーランド
ベルリンから3時間の電車の旅を終えてポズナン駅に到着すると、現地のストリート・マガジン『Gazeta Uliczna(ガゼタ・ウリツィナ)』のスタッフ、マグダとジャネッタが迎えに来てくれていた。早速彼らの事務所へと向かう。
ストリート・マガジン『ガゼタ・ウリツィナ』は、「バルカ財団」という非営利団体の1つのプロジェクトで、この財団自体の歴史は20年前にさかのぼる。
1989年、共産国から民主化へ大きく舵を切ったこの国には、問題が山積みだった。その1つが、これまで官のものだった住宅が民営化されたこと。家主は家賃を吊り上げ、払えない人たちは追い出されるということが多発した。借主たちを保護する法律もなく、彼らは路上へ出るより方法がなかったという。
同年、家を失った人たちと、バーバラ&トマシュ・スドウスキ夫妻が、廃墟となった小学校で共に暮らし始めたのが、バルカ財団の始まりだ。心理学者として精神病院に勤めていた夫妻にとって、病院に捕らわれの身となって薬漬けにされている患者たちの姿にも違和感がぬぐいきれなかった。そんな患者たちも、彼らのコミュニティに加わり、ともに野菜や家畜を育てながら暮らしていた。
20年余の時を経て、彼らの働きはポーランド全土におよび、現在ではEUからも助成金を受ける大きな組織に成長している。英国、オランダ、ドイツなどにもオフィスを構え、移民として外国へ出たものの職がなくアルコール依存症者となり路上暮らしをしているポーランド人たちに国へ帰れるよう足がかりをつける働きもしている。
ポズナンの事務所を訪れると、長期失業者のためのワークショップが8つ行われていた。その1つ、縫物のクラスでは、女性たちがおしゃべりしながら、ミシンでテーブルクロスをつくっているところだった。参加者の1人ベアタは、3年間無職で、社会福祉センターからここを紹介されたという。「何もすることがなくて家にいるのが一番つらいの。ここはチャレンジングな人生を送っている人たちが多いけれど、悩みを共有できるからとても助かっているの。私も早く長期失業状態から抜け出して、安定した暮らしがしたいわ」と語る。
調理ワークショップでは、スタッフ等のために毎日ランチをつくる。「ここで習ったサンドイッチの盛り付け方を家で披露すると、旦那が喜んでくれたわ」と参加者のイルナは言う。
お昼に食べた豆スープは、たっぷりの愛情の香りがした。
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