2011年6月2日木曜日
5月30日 パート1 @ザルツブルグ
オーストリア、ザルツブルグで販売されている『アプロポ(Apropos)』は、現地のNPO「Sozialen Arbeit GmbH(以下、SA)」が母体となって、97年に創刊された。SAは、長く失業状態にある人や、ホームレス状態にある人に職を提供する目的で立ち上げられたものだ。『アプロポ』の事務所もある「SA」の建物の1階ではレストランが運営されており、ここでも何人か、長期失業状態だった人が雇用されている。
創刊から14年の時を経て、『アプロポ』は、人口15万人のこの街で月に約1万部を発行しており、着実に人々の心をとらえている。実際、バス停でたまたま隣で座って待っている学生さんや、ふらりと寄った本屋さんで「『アプロポ』って知ってますか?」と聞くと、「あぁ、あの街角で売っている雑誌でしょ、買ったことあるわよ」と即、答えが返ってくる。
現在『アプロポ』は編集長のミカエラと編集部員のアーニャ、販売担当のハンスが正規スタッフで、あとは学生インターンやボランティア、またフリーランスのカメラマンやデザイナーによって運営されている。「SA」を通して、今年は国から7万ユーロの助成金を受けたという。
事務所を訪れると、朝のひと仕事を終えた販売者のアンドレアとゲオルグ&エヴェリナ夫妻がお茶を飲んでくつろいでいた。
アンドレアは、今もザルツブルグ旧市街周辺の山にテントを張って住んでいて、野草に詳しい。「Dost(オレガノ)は血液の循環をよくしてくれて、Johanniskraut(セント・ジョンズ・ワート/セイヨウオトギリソウ)は、神経をしずめてくれるの。Brennessel (イラクサ)は、体内をきれいにしてくれるわよ。私はよくこれらをお茶にして飲んでいるの」。元先生だけあって、教えるのと勧めるのがとても上手だ。
ゲオルグ&エヴェリナ夫妻は、路上で知り合い、今年4月、4度目の結婚記念日を祝った。アルコール依存症、路上生活、犯罪、刑務所生活・・・と彼らの人生は決して平たんではなかったけれど、こうして寄り添ってたたずむ2人を見ているだけで、こちらの心も和む。失ってもまた取り戻せるし、壊れてもまた1つずつ積み上げていけばいい―――言葉で言うのは簡単だけど、そうやって実際に生き抜いてきた人を目の当たりにすると、なんだか本当に生きていく勇気をもらう。
ゲオルグ&エヴェリナは、最近市民ラジオでラジオ番組の制作を始めた。ワークショップを通してラジオ番組制作の基本を学び、月1回自身の声を発信している。
「これよ、ほらエヴェリナの声!」、『アプロポ』編集長のミカエラが叫び、自身のパソコンにダウンロードしている彼らの番組を聞かせてくれる。その横顔は、とてもうれしそうで誇らしげだった。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿