2011年6月13日月曜日
6月8日 パート1 @ベルリン
『善き人のためのソナタ』(’06)を知っていますか? なんて改めて聞くまでもなく、本当に素晴らしい映画だった。
舞台はベルリンの壁崩壊5年前、1984年の東ベルリン。国家保安省(シュタージ)の局員ヴィースラー大尉が、劇作家ドライマンとその恋人の舞台女優クリスタを監視し、彼らが反体制である証拠を見つけるように命じられたことから物語は幕を開ける。盗聴器を仕掛け、日夜彼らの監視に励むヴィースラー大尉。だが、聞こえてくる彼らの会話や息遣い、そして美しいソナタは、大尉の固まった心に、少しずつ人間性を取り戻させるのだ。
ベルリンに来て、まず行きたかったのは、この映画のラストで使われたカール・マルクス通りにある「カール・マルクス書店」。1953年オープンのこの書店は、08年に閉鎖されたのだが、看板はそのまま残されていた。あのラストシーンの余韻をまた思い出し、しばし本屋前でたたずむ。
それから2日。今日は、宿から地下鉄を乗り継ぎ、「Magdalenen-strasse」駅で降りて「シュタージ博物館」へやって来た。
木の根っこに、ネクタイピンに、時計・・・さまざまなところにカメラや録音機をしのばせて、人が人を監視しあった時代・・・友人や親せき、家族にも心許せない疑心暗鬼の世界に生きるというのは、どれほど息苦しいものだったろうか。
先日訪れたベルリンの壁跡地でも、それほど高くなく薄い壁は、どうにかしたら乗り越えられそうな夢を見させる。だが、「監視社会の息苦しさを逃れて西へ」、そう思って乗り越えようとした壁の向こうに、死が待っていることも少なくなかった。
『善き人のためのソナタ』大尉を演じたウルリッヒ・ミューエは東ベルリン出身で自身も監視された過去をもつという。
現在、東ベルリンの中央駅だったOstbahnhofからすぐのシュプレー川沿いに残る最長のベルリンの壁跡は、イーストギャラリーとして、世界中のアーティストによるアート作品に生まれ変わっている。
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