2011年5月9日月曜日

5月5日  @サンクトペテルブルグ
 ロシアには400万人の透明人間がいるという。
「僕も11年間、透明人間だったんだよ」。ロシアのストリート・マガジン『プット・ドモイ』の代表を務めるアーカディはそう語る。
 ロシアでは、90日以上1つの都市にステイした場合、その地での住民登録が必要となる。もしこれを怠れば、住民登録が失効。医療や教育などの国のサービスのほとんどが受けられなくなり、職に就くことや家を借りることも困難を極める。また一度住民登録を失うと、再発行はかなり難しい。
 95年にこのプロピスカといわれるシステムは法律上なくなったと言われているが、実態は昔のままだという。
 アーカディは08年10月から09年2月にかけて77人の「透明人間」に取材。彼らを顕在化してみせた。そのうちの4人により濃密な取材を重ねて映像作品「Invisible man(透明人間)」も制作した。
 一度失った「プロピスカ」を再発行してもらうには、家のオーナーになるか、結婚するしか方法はないという。ロシアでは、9平方メートル以上の部屋を購入することができれば、その人は家の“オーナー”とみなされる。ただ、その9平方メートルの一部屋でも月収の90倍程度のお金がかかり、並大抵ではできないことだという。
 ちなみにアーカディ自身は4年前に友人などの助けを借りて、ある一軒家の一部屋を購入し、オーナーになることができ、それによって「透明人間」を脱することができた。
「人生はチームプレイだからこそおもしろい。痛みを抱えているときでも、一人じゃないんだ」、そう言って、アーカディは笑った。

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