2011年5月27日金曜日


5月23日 パート1 @アムステルダム、オランダ
 トラムを乗り継いで、アムステルダム東部にあるストリート・マガジン『Z!』の事務所にやって来た。
 販売担当のヨルンが、笑顔で出迎えてくれる。95年に創刊されたこの雑誌の歴史を紐解くと、この国の歴史を垣間見ることになる。
「初めの5年は、ホームレス問題をどうやったら目に見える問題にするかに苦心していたね」と語るヨルン。当初、販売者は、オランダ人や、この国の合法ドラッグ目当てでやって来た英国人、ドイツ人が多かったそうだ。
 だが、世論などによって、政府がホームレス問題に取り組むようになり、オランダ人は屋根のある家に住めるようにする政策をすすめると、後に残ったのは「違法」状態でこの国に滞在している人たちだった。
 現在、『Z!』の販売者は75パーセントがオランダ人ではない国籍の保有者で、その国々はポーランド、チェコ、旧ソ連、ブルガリア、ルーマニアと35カ国におよぶ。『Z!』では、02年に販売者の写真集を出したが、そのスタイリッシュな本も、販売者の多様性を如実に表す。
「僕らは政府の助成金をもらっていないから、その人が合法的にオランダに滞在しているか、違法かなんてことはどうでもいい。ただ、その人がホームレス状態でありさえすれば、販売者として登録できるんだよ」と語るヨルン。
 10年以上この雑誌を通して販売者さんとかかわってきた彼に、その間もっともうれしかったことと、悲しかったことを聞いてみた。
「うれしかったことは、ある日刷り上がったばかりの新しい号が事務所に届いたので、トラックに駆け寄ると、なんと運転手が元販売者だったんだよ! 皆で『おう、何やってるんだよ?!』って声かけると、『何って、仕事を手に入れたんだよ! 今トラックの運転手やってるんだよ』ってさ! 皆で、その喜びを分かち合ったよ」
「一番悲しかったことは、ある販売者のお葬式に出席したことだね。49歳でヘロイン依存症の女性だった。知り合いがアコーディオンを弾いてくれて、その音色のもの悲しさを今でも覚えているよ」

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