2011年5月27日金曜日


5月23日 パート2 @アムステルダム、オランダ
 ヨルンの次に話を聞いたのは、元『Z!』の販売者で、現在はスタッフとして働くヨープ・ハマースマ。
「アムステルダム中央駅で『Z!』の販売者に出会ったのがすべての始まりさ。その前は6カ月野宿していたんだけど、地獄のようだった。公園で1日、何もすることがなくて、どこにも行くところがなくて、公園で日がな1日ボーっとしてたのが一番耐えられなかったね。そんな地獄のような毎日でも人生は続いていくんだ」
 10年間の雑誌販売の後、ヨープがスタッフとして働くようになってもう5年になる。ホームレス状態という同じ経験をしたからこそ、現在の販売者に共感し、時に叱責もする。そんなハマースマの姿に、励まされる販売者さんも多い。
 公園で野宿をしていた時のヨープ・ハマースマのように、居場所がないことほど心がすさむことはない。
 『Z!』の事務所を後にして訪れたNPO「マコム」では、居場所がない、「ホーム」と呼べる場所がない人には誰でも、食事やコミュニケーションの場を提供している。7年間ここで働くキャサリン・デンカースは語る。「オランダにはタウスロースとダックロースという言葉があります。タウスロースは「ホーム」のない人、ダックロースは屋根のない人。私たちは、タウスロースであれ、ダックロースであれ、居場所のない人に居場所を提供したいのです」
 17時過ぎ、1階は食事時だった。2階に上がると、コーヒーを飲みながら談笑する人、絵筆を握る人、次に描く絵の構想を練る人と、思い思いに時を過ごしている。皆表情に険しさがなく、穏やかな顔をしている。
 会話の中でキャサリンはこう語った。「孤独が人を死に追いやる」と。雨風をしのげる屋根はあっても「ホーム」といえる居場所がない人は、世界中にいるに違いない。どうしたら、私たちの住むこの世界を皆にとっての「ホーム」にできるのか。正解はないけれど、答えに向けて動いている人々の輝いた顔に勇気づけられた1日だった。

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