2011年5月11日水曜日


5月10日 パート2 @オスロ
『エルリック・オスロ』の事務所から歩いて5分ほどのところにある、ニルスの販売場所に連れて行ってもらう。1時間弱の間に老若男女さまざまな顔ぶれのお客さんがやってくる。皆一様に、ニルスと軽快に言葉を交わす。ニルスも毎回律儀に、「日本から来たんだよ」と傍らの私を紹介してくれる。
お客さんが通りの角に消えた後、「あの人常連さんなの?」とニルスに聞くと、「ううん」と首を横に振る。「でも、この雑誌のおかげで、皆僕にフレンドリーに近づいてきてくれて、互いにおしゃべりを楽しむことができるんだ。通りで物乞いをしていた時は、『あっち行ってくれよ』って目で見られたのにね。大きい変化だよね」
そういえば、とクリスチャンの言葉を思い出す。一度薬物に手を出すと社会復帰はかなり難しい。だから、まず社会に復帰してもらって、自尊心を取り戻してもらってから、薬物依存の問題と向き合えばいい。
ニルスの輝いた顔を見ると、その方法は間違っていないように思える。まず「受け入れる」。そうしたら、こんなに人って変われるのだ。
何度目撃しても、それはやっぱり1冊の雑誌がもたらす奇跡のように思えてしまう。「ドラッグ依存症者」ではなく、1人のニルスへ。彼の自信に満ちた穏やかな笑顔は、まるで魔法の杖を一振りしたマジックのよう。でも考えてみると、いろんなレッテルを排して、一人の人間にもどりたいのは、実はニルスだけじゃなくて、私たちみんなじゃないかな、と思う。みんな、魔法の杖の一振りを必要としているんじゃないだろうか。みんな、まず受け入れてほしいんじゃないだろうか。
オスロの青い空の下で、そんなことを思った。

0 件のコメント:

コメントを投稿