2011年4月21日木曜日





4月13日 パート2 @ソウル
ソウル市内で土曜日以外の週6回炊き出しを行っている団体、それが「ストリート・エンジェル」だ。97年、IMF危機により経済が急激に冷え込んだこの国で、ホームレス人口が激増したといわれる。その97年からもう約14年、「ストリート・エンジェル」はその活動を続けている。
夜10時、事務所には20名近い大学生や教会関係者らボランティアが集まり、炊き出しの準備が始まった。炊飯器からは白い湯気が上がり、おでんの香りが部屋に立ち込める。
料理をバンに積み、事務所を出発したのは、深夜近く。まずは地下鉄の市庁駅に到着。階段を下りると、すでに50名近い人が列をなしていた。ほとんどが50-60代の男性。ちらほら若い男性も見受けられる。一様に暗めの色の服に身を包み、大きな荷物を背負っている。
日頃せわしげに人が行きかうソウル市のど真ん中で、深夜の夕餉が繰り広げられていることを、どれだけの人が知っているのだろう。列の最後の1人がお椀を受け取り、ふと気づくと、列に並んでいた人並みはいつのまにか散り散りに夜の闇へ消えていた。
市庁駅から2号線を2駅進んだ乙支路3街駅では、炊き出しの列のはざまで「ストリート・エンジェル」現代表のチョ・ジュンヒさんが、1人のホームレスの青年と話し込んでいた。堰を切ったように前のめりに話し続ける青年と、文字通り耳を傾けるジュンヒさん。
こらえきれず青年が涙をこぼすと、ジュンヒさんは青年の鼻水をぬぐった。そんな2人の姿を見て、光る鼻水を、心の底から美しいと思った。地下でひしと抱き合う姿は、なんだかそこだけスポットライトが当たったようで、どんな名画や世界遺産に登録されている景色よりも神々しく、「生きる」というタイトルがふさわしい彫刻のようだった。

0 件のコメント:

コメントを投稿